最後に笑ったのは誰 - りょう - club 7UP・セブンアップ - 小山・西口のキャバクラ
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最後に笑ったのは誰
2026年06月29日 15時57分
最後に笑ったのは誰
大学の卒業旅行で、俺たちは山奥の貸別荘に泊まった。
男四人。
安いレンタカー。
スーパーで買った酒と肉。
それだけで十分楽しかった。
貸別荘は、森の中にぽつんと建っていた。
古い木造の二階建てで、管理人のおじさんは鍵を渡すときに言った。
「夜、外で笑い声がしても出ないでくださいね」
俺たちは顔を見合わせた。
「動物ですか?」
友達の祐介が聞くと、おじさんは少し笑った。
「まあ、そんなものです」
その言い方が妙に引っかかった。
でも、酒が入ればそんな話はすぐ忘れた。
夜十時。
俺たちはリビングで鍋をつつきながら、くだらない話をしていた。
「この中で一番最初に結婚するの誰だろうな」
「お前は無理だろ」
「いや、お前もだろ」
笑い声が部屋に響く。
そのときだった。
外から、笑い声が聞こえた。
「あははは」
女の笑い声だった。
全員が黙った。
窓の外は真っ暗。
周りには他の家なんてない。
祐介が小声で言った。
「今の、聞こえた?」
「管理人が言ってたやつじゃね?」
「動物って笑うか?」
もう一度、外から聞こえた。
「あはははは」
今度は少し近い。
窓のすぐ外ではない。
でも、庭の端くらいにはいる。
友達の亮が、ふざけて窓へ近づいた。
「やめとけって」
俺が止めたが、亮はカーテンを少しだけ開けた。
「誰もいねえよ」
そう言った直後。
亮の顔から笑いが消えた。
「……いや、いる」
俺たちは窓に近づいた。
庭の奥。
木々の間に、白い服の女が立っていた。
距離は十メートルくらい。
長い髪で顔は見えない。
でも、肩が小刻みに揺れている。
笑っている。
「あはは」
「あははは」
祐介がカーテンを閉めた。
「無理。これは無理」
俺たちは鍵を確認した。
玄関。
勝手口。
窓。
全部閉まっている。
それなのに、笑い声は止まらなかった。
しかも、少しずつ近づいてくる。
「あははは」
声は庭から、玄関の方へ回った。
そして、玄関のドアの前で止まった。
しばらく沈黙。
次の瞬間。
コン。
ドアがノックされた。
俺たちは固まった。
コン。
コン。
女の声がした。
「入れて」
誰も返事をしない。
「寒いの」
また、あの笑い声。
「あはは」
怖いはずなのに、なぜか腹の奥がむずむずした。
笑いそうになった。
俺だけじゃない。
祐介も、亮も、拓馬も、口元を押さえている。
変だった。
恐怖で笑うとか、そういう感じじゃない。
笑わされている。
喉の奥から、勝手に笑いがこみ上げてくる。
「あは」
最初に笑ったのは亮だった。
「おい、やめろ」
そう言う俺の声も震えていた。
亮は口を押さえながら笑っている。
「あはは……やばい、止まんねえ」
玄関の外の女も笑う。
「あはははは」
亮の笑い声が、それに重なった。
次に祐介が笑い出した。
「あは、あはは、なんだこれ」
拓馬が泣きながら言った。
「笑うな! 笑ったらまずい気がする!」
でも、拓馬も笑っていた。
俺も限界だった。
喉が勝手に震える。
「あは」
笑った瞬間、玄関の鍵が一つ外れた。
カチャ。
全員の笑いが止まった。
女の声がした。
「ひとり」
俺たちは顔を見合わせた。
亮が青ざめながら言った。
「今、俺が最初に笑ったから?」
玄関の外で、女がまた笑う。
「あはは」
今度は祐介が耐えきれず笑った。
カチャ。
チェーンが揺れた。
「ふたり」
拓馬が叫んだ。
「耳塞げ!」
俺たちは耳を塞いだ。
でも、聞こえた。
耳の外からじゃない。
頭の中で、女が笑っていた。
「あはははは」
祐介が床に転がって笑いながら泣いていた。
「無理、無理、止まんねえ!」
カチャ。
玄関のドアが少し開いた。
外の冷たい空気が入ってくる。
隙間から、白い指が見えた。
長くて細い指。
ドアの向こうで、女が言った。
「さんにん」
残っているのは、俺だけだった。
俺は口を両手で押さえた。
絶対に笑うな。
笑ったら入ってくる。
そう思った。
でも、床に倒れた亮が、俺を見上げて言った。
「なあ」
その顔は、笑っていた。
目だけは泣いている。
「最後に笑ったの、誰だと思う?」
「やめろ」
「俺たちじゃないよな」
「やめろ!」
亮は、口角をありえないくらい上げて言った。
「最初から、部屋の中にもいたよな」
その瞬間、背後で笑い声がした。
「あは」
俺の耳元だった。
俺は振り返ってしまった。
リビングの隅。
ソファの後ろに、もう一人の女がしゃがんでいた。
白い服。
長い髪。
顔は見えない。
女は肩を震わせて笑っている。
外にいるはずの女と同じ声で。
「あはははは」
俺の喉が勝手に動いた。
「あは」
カチャ。
最後の鍵が外れた。
玄関のドアが開いた。
外の女が入ってくる。
中の女が立ち上がる。
二人いる。
いや、違った。
窓にも、廊下にも、階段にも、白い服の女が立っていた。
全員が笑っている。
「あはははははははは」
俺たち四人の笑い声も混ざった。
その後の記憶はない。
翌朝、管理人に起こされた。
俺たちはリビングで倒れていた。
全員、無事だった。
玄関の鍵も閉まっている。
窓も割れていない。
ただ、奇妙なことが一つあった。
俺たち全員のスマホに、同じ写真が保存されていた。
深夜二時三分。
リビングで、俺たち四人が並んで笑っている写真。
撮った覚えはない。
そして、俺たちの後ろに、白い服の女が何十人も立っていた。
写真の下には、文字が入っていた。
最後に笑った人を、また迎えに行きます
その日から、俺たちは四人で会っていない。
なぜなら、誰も覚えていないからだ。
あの夜、最後に笑ったのが誰だったのか。
ただ昨日、祐介から一枚の写真が送られてきた。
俺の部屋の写真だった。
ベッドで眠る俺の枕元に、白い服の女が立っている。
メッセージは一言だけ。
今、笑った?
プロフィール
名前:りょう(リョウ) [20才]
T220
肩書き:おれかおれ以外か
血液型:O型
前職:OL
出身地:栃木県
お酒・タバコ:飲めない・吸わない
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