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~怖い話~知らない子供の絵

2026年06月15日 19時06分

知らない子どもの絵

妹の子どもが、急に絵を描くようになった。

甥っ子のハルは四歳。

それまで絵なんて、丸と線をぐちゃぐちゃに描くくらいだったのに、ある日から急に人の顔を描き始めた。

最初に見たのは、妹の家に遊びに行った日だった。

リビングのテーブルに、クレヨンで描かれた絵が置いてあった。

女の子の絵だった。

長い髪。
黒い目。
赤いワンピース。

子どもが描いたにしては、妙に特徴がはっきりしていた。

「これ、誰?」

俺が聞くと、ハルはテレビを見たまま答えた。

「ゆいちゃん」

「保育園の友達?」

「ちがう」

ハルは振り返らずに言った。

「押し入れの中にいる子」

妹が笑った。

「またそういうこと言って。最近、空想の友達がいるみたいでさ」

俺も最初は笑った。

子どもにはよくあることだと思った。

でも、その日からハルは毎日、その女の子の絵を描くようになった。

赤いワンピースの女の子。

最初は立っているだけだった。

次は、家の前にいた。

その次は、玄関の中。

そして数日後、妹から写真が送られてきた。

絵の中の女の子は、リビングに立っていた。

その後ろに、ソファで寝ている妹が描かれている。

妹は冗談っぽくメッセージを添えていた。

「見守られてるらしい(笑)」

俺は笑えなかった。

その夜、妹から電話が来た。

声が震えていた。

「ねえ、ちょっと変なんだけど」

「どうした?」

「ハルが描いた絵の場所に、毎回、何か落ちてるの」

「何かって?」

「髪の毛」

長い黒い髪の毛が一本。

絵で女の子が立っている場所に、必ず落ちているらしい。

妹は黒髪ではない。
ハルも短髪。
家にそんな長い髪の人はいない。

俺は、気味が悪いから絵を捨てろと言った。

でも妹は、

「子どもの描いた絵を捨てるのも怖いじゃん」

と言って、そのままにした。

次の日。

また絵が送られてきた。

今度の絵には、妹の寝室が描かれていた。

ベッド。
カーテン。
小さなライト。

そしてベッドの横に、赤いワンピースの女の子。

でも変だった。

女の子の顔が、前より少し大きい。

目も黒く塗りつぶされている。

その下に、ハルの字でこう書いてあった。

まま まだ おきてる

俺はすぐ妹に電話した。

「今日、ハルと一緒に実家に泊まれ」

「え、なんで?」

「いいから。今すぐ出ろ」

妹は困惑していたが、俺の声が本気だったからか、ハルを連れて実家へ向かった。

その途中、妹が言った。

「ねえ、ハルがまた変なこと言ってる」

電話の向こうで、ハルの声が聞こえた。

「ゆいちゃん、怒ってる」

妹が苦笑いする。

「なんで怒ってるの?」

ハルは小さく答えた。

「ままが、絵から出してくれないから」

背筋が冷えた。

その夜、妹とハルは実家に泊まった。

何事もなかった。

翌日、俺は妹の家に一緒に行くことにした。

玄関を開けた瞬間、嫌な匂いがした。

湿った土のような匂い。

リビングには、ハルの絵が散らばっていた。

昨日まで数枚だったはずなのに、床一面にある。

全部、同じ女の子。

赤いワンピース。
長い髪。
黒い目。

ただ、一枚だけ違う絵があった。

家の間取り図みたいな絵。

玄関、リビング、寝室、風呂場。

そして押し入れの前に、女の子が描かれている。

その横に、クレヨンで大きく書かれていた。

ここ

俺と妹は、ハルの部屋の押し入れを見た。

ふすまは閉まっている。

妹が震えながら言った。

「昨日、出る前に閉めたっけ……」

俺はゆっくりふすまを開けた。

中には布団しかない。

でも、布団の奥の壁に、子どもの手形がびっしりついていた。

赤いクレヨンで。

その中央に、細い隙間があった。

壁板が少し浮いている。

俺は手をかけて、力を入れた。

板が外れた。

奥には、小さな空間があった。

そこに、古いスケッチブックが一冊落ちていた。

表紙には、子どもの字で名前が書いてあった。

ゆい

中を開くと、赤いワンピースの女の子の絵が何枚も描かれていた。

いや、違う。

女の子が描いた絵だった。

家族の絵。
部屋の絵。
押し入れの絵。

そして最後のページに、黒いクレヨンでこう書かれていた。

だれか みつけて

妹は泣きながら警察を呼んだ。

後日、この部屋に昔住んでいた一家のことが分かった。

その家には、ゆいという女の子がいた。

ある日、突然いなくなった。

親は「親戚の家に預けた」と言って引っ越したらしい。

でも、記録はそこで途切れていた。

押し入れの奥からは、何も見つからなかった。

骨も、服も、髪の毛も。

ただ、警察が帰ったあと、ハルが新しい絵を描いた。

今度は、赤いワンピースの女の子が笑っている絵だった。

俺たちは少しだけ安心した。

見つけてほしかっただけなのかもしれない。

そう思った。

でも、その夜。

ハルが寝たあと、妹から一枚の写真が送られてきた。

ハルの新しい絵だった。

赤いワンピースの女の子の隣に、もう一人、小さな男の子が描かれていた。

ハルにそっくりな男の子。

二人は手をつないでいる。

絵の下には、こう書かれていた。

つぎは このこ

 

 

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