宴HIME (ウタヒメ)
鶯谷 昭和・平成ガールズバー
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121.それでも踊りたかった
2026年01月02日 12時00分
夜は静かだった。
引き止めたあとの部屋は、言葉がなくて、やけに落ち着かなかった。
布団に並んで横になっているのに、
二人の間には、数センチの隙間がある。
近い。
でも、触れていない。
彼女は天井を見たまま、瞬きをゆっくり繰り返していた。
眠いはずなのに、目を閉じない。
俺は横目で、その横顔を見てしまう。
ダメだろ。
そう思っても、視線が離れない。
睫毛が影を落として、唇が少しだけ開いている。
「……寝ないのか」
小さく聞くと、彼女は首を振った。
「今、寝たら……離れそうだから」
胸が、ぎゅっと縮む。
そんなこと、言うなよ。
引き止めた意味が、重くなる。
彼女が、ほんの少しだけ体を寄せてくる。
布団越しに、熱が伝わる。
近い。
息が、かかる。
俺は動けなかった。
彼女の額が、彼の肩に触れる。
それだけで、心臓がうるさくなる。
「……ねえ、━━━」
名前を呼ばれるのは、ずるかった。
「ここにいる?」
確認みたいな声。
「いる」
即答だった。
彼女は安心したみたいに、顔を上げる。
二人の距離が、さらに縮まる。
鼻先が、ぶつかりそうになる。
呼吸が、混ざる。
あと少し前に出れば唇が触れる距離。
喉が鳴るのを必死で抑えた。
触れたら、戻れなくなる。
彼女の目が、半分閉じる。
眠気と、安心と、期待が混ざった顔。
「……離れないで」
その一言で、限界だった。
俺は、彼女の額に自分の額をそっと預けた。
キスじゃない。
逃げ道を残した、ぎりぎりの距離。
「……寝ろ」
声が、低くなる。
彼女は小さく笑って、目を閉じる。
唇が、ほんの少しだけ動いた。
触れなかった。
触れられなかった。
でも、
彼女が眠りに落ちるまで、俺は一度も、距離を広げなかった。
夜の終わり、彼女の呼吸が完全に寝息に変わったころ。
聞こえないくらい小さく呟く。
「……好きだよ」
答えはない。
でも、それでよかった。
今はまだ。
この距離で、壊れずにいられるなら。
プロフィール
名前:みさき(999)
T160 3(F)/7/10
肩書き:鶯谷三銃士:メンヘラ代表
血液型:A型
前職:セミです
喋れません
人と関わりたくないニート
放っておいて下さい
出身地:埼玉県
タバコ:吸わない
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