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指値は「買えないだろうな」くらいでちょうどいい

2026年06月20日 22時10分

GOの1971円と、東京メトロの地味な割安さ

今日はGOに1971円で300株、買いの指値を入れてみた。
正直に言えば、たぶん買えないと思っている。けれど、こういう注文はそれでいい。むしろ、「さすがにそこまでは来ないだろう」と思うくらいの価格に静かに置いておくほうが、IPO直後の銘柄とは相性がいい。追いかけて買うより、来たら拾う、来なければ見送る。そのくらいの距離感のほうが、相場ではたいていうまくいく。 GO

そもそも、GO は内容の悪い会社ではない。2025年5月期の実績は売上高314.34億円、経常利益26.32億円、最終利益20.00億円で、通期黒字化を達成した。さらに会社予想では、2026年5月期に売上高408.00億円、経常利益67.00億円、純利益64.00億円、EPS82.39円を見込んでいる。配車アプリの実車数拡大に加え、アプリ手配料の引き上げや周辺サービスの伸びを織り込んだ数字で、見た目の成長力はかなり強い。少なくとも「夢だけで買われているIPO」という段階ではなく、利益の裏付けがつき始めたグロース株だと言っていい。 GO株式会社 JPX

一方で、株価の動きはきわめてIPOらしい。公開価格は2400円、初値は2910円で、上場初日には2948円まで買われた。その後は需給主導で値を崩し、6月19日の日中では始値2391円、高値2400円、安値2215円まで下げている。つまり、1971円という指値は、この日の安値からさらに244円下、率にするとおよそ11%下の水準だ。普通の押し目としてはかなり深い。だから、常識的に見れば「今日は届かないだろう」という感覚は正しい。だが、IPO直後というのは常識の外側で値が飛ぶ局面がある。ファンダメンタルズが正しくても、需給だけで一段安が入ることは珍しくない。そう考えると、1971円は無茶な価格ではなく、むしろ“来たらラッキー”の待ち伏せラインとしては悪くない。 Reuters 株探 日本経済新聞

この銘柄を買うときに大事なのは、「良い会社かどうか」と「今この株価で買う価値があるか」を分けて考えることだ。会社そのものは面白い。タクシー配車だけでなく、GO Pay、GO BUSINESS、TOKYO PRIME、GO Charge、物流など、周辺事業まで広がりがある。しかも累計ダウンロード数は3500万超、提携タクシーは約8.5万台と、日本のモビリティ・プラットフォームとしてはかなりの存在感がある。ただし、良い会社であることと、目先の株価が割安であることは別問題だ。上場直後の熱狂が一巡した局面では、どれほど筋の良い成長株でも、一度は「期待を剥がす」値動きが起きる。そのときに慌てて飛びつくより、誰も買いたがらない値段にそっと注文を置いておくほうが、あとで効いてくる。 IPOナビ JPX

私が1971円という数字に違和感を持たないのは、そこが単なる願望価格ではなく、「今の熱気がもう一段剥がれたら見えてくるかもしれない値段」だからだ。たぶん簡単には約定しない。だが、それでいい。相場では、買える値段で買うより、買いたい値段で待つほうが、結果としてリスクが小さいことが多い。特にGOのように、事業の評価と株価のボラティリティがまだ釣り合っていない銘柄ではなおさらだ。「買えないだろうな」と思いながら置く指値は、弱気なのではなく、需給相場に対する礼儀のようなものだと思っている。 GO株式会社 日本経済新聞

そんなことを考えていると、ふと「そういえば東京メトロってどうなったんだ」と思い出す。
初値は1630円。大型IPOらしく派手に始まったが、足元の株価は1330円台から1350円前後まで沈んできた。数字だけ眺めると、決して高い銘柄には見えない。PBRはおおむね1.05〜1.06倍、予想配当利回りは3.25〜3.28%前後で、いかにも“そこそこ割安”な景色だ。にもかかわらず、株価には熱がない。 東京地下鉄 Yahoo!ファイナンス みんかぶ

この違和感はよくわかる。東京メトロは、数字だけ見ればそんなに悪くない。配当もあるし、PBRも1倍近辺まで落ちてきた。会社としても、2025年度から2027年度の中期経営計画期間ではDOE3.4%程度を確保する方針を示しており、還元姿勢そのものが極端に渋いわけでもない。資産も事業基盤も強固で、突然何かが壊れるような会社でもない。だが、それでも市場は盛り上がらない。なぜかと言えば、この銘柄には「安い」以上の物語が乏しいからだ。 東京メトロIR 日本経済新聞

結局のところ、市場が欲しがるのは、割安株そのものではなく、再評価される理由のある割安株だ。東京メトロには安定感がある。だが、強い成長期待を乗せにくい。鉄道という成熟事業であり、利益は読めるが、大きなサプライズも出にくい。上場直後の“話題性プレミアム”が剥がれたあとに残るのは、堅実さと地味さだ。加えて、足元では利益成長鈍化への見方や、証券会社による目標株価引き下げ・弱気継続といった材料も重しになっている。数字上は割安でも、資金が前のめりで集まる導線が弱い。だから「割安だが魅力がない」という見え方になってしまう。 Finasee Yahoo!ファイナンス 日本経済新聞

ここが、GOと東京メトロのいちばん面白い対比だと思う。
GOは割安とは言いにくいが、成長の匂いがある。だから高いところを買う人もいるし、深く押せば拾いたい人もいる。値動きは荒いが、物語がある。
一方の東京メトロは、数字だけならむしろ落ち着いている。PBR約1倍、配当利回り3%台、安定事業。にもかかわらず、いまひとつ資金が色気を持って入ってこない。こちらは値動きが穏やかな代わりに、上に走る理由も乏しい。相場はいつも、正しいものを買うとは限らない。面白いもの、期待が膨らむもの、もう少し言えば“語れるもの”に資金が寄る。そう考えると、GOに指値を置きながら、東京メトロに妙な物足りなさを感じるのは、ごく自然な感覚だと思う。 IPOナビ 東京地下鉄

もちろん、これはどちらが優れているという話ではない。
GOは高成長の期待を背負うぶん、失望も大きい。東京メトロは地味なぶん、崩れにくい。前者は夢を買う銘柄であり、後者は安定を買う銘柄だ。ただ、相場の現場では、安定だけでは人は動かない。配当利回りが3%ある、PBRが1倍近い、それだけでは「だから今すぐ買おう」とはならない。逆に、GOの1971円のような無理筋にも見える指値には、不思議と相場らしさがある。夢の値段が剥がれたところで待つ、という発想があるからだ。 GO株式会社 東京メトロIR

だから今日の感想をひと言でまとめるなら、こうなる。
GOは1971円で300株、たぶん買えない。けれど、買えないだろうなと思うくらいの指値こそ、IPO直後の銘柄にはちょうどいい。
東京メトロは1330〜1350円台、PBR約1倍、利回り3%台。数字は悪くない。だが、市場は「安い」だけでは振り向かず、「その先に何があるか」を見る。
結局、相場は割安株より、物語のある株に資金が寄る。だからこそ、GOには深い指値を置き、東京メトロには割安感を認めつつも、どこか色気の薄さを感じる。今日はそんな一日だった

 

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