ジジジ……俺、セミ。気づいたらコンカフェにいた。
どうも。俺はセミ。
アブラゼミ、地上生活3日目。
地中で7年モグモグしてたら、ようやく羽化して、
「さて、今日も生きっか〜!」と思ってたところ。
その日は暑かった。

電柱の上から見下ろす街。
目を凝らすと、怪しく光る看板。
「♡萌え萌えカフェ Heaven's Ring♡」
何だあれは……。
俺の自作ソングより強烈なパワーを放ってる。
吸い寄せられるように、羽ばたいた。
扉の向こう、
白黒のフリフリした服を着た生き物が近づいてきた。
「いらっしゃいませ〜♡おかえりなさいませぇぇ♡♡♡」
ジジッ……!?
この鳴き声……俺と同類か?!
とりあえず天井に張りついて様子を見ることにした。
(※店員に「セミいるぅぅぅ!!!」と叫ばれ、照明に退避)
何やら、人間がカウンターに座って「チェキください」とか言ってた。
するとフリフリ生物(以下:嬢)が、
「にゃんにゃんポーズ♡いっくよ〜〜♡」
「萌え萌え♡きゅんっっっ♡♡♡」
……なんだこれは。なんかの儀式か?
しかもそのあと「お代は3300円です♡」って言ってた。
室内は涼しくてよかったけど、
羽がLED照明に溶けそうになった。
ドリンク頼もうとしたけど、人間語しゃべれない。
代わりに「ジジジジジ!!!!!」って鳴いたら、
「こっちの電球がうるさいんですけど〜〜💢」って言われた。
俺は電球じゃねぇ。
最終的に内勤らしき野郎にティッシュで包まれて店外へ。
やさしかった。ありがとう、メガネの男。
俺は今、公園の木の下で力尽きつつある。
でも、あのカフェで見た「嬢」たちの姿……忘れない。
あれは間違いなく、俺たちセミの進化形。
鳴き、魅せ、短命でも光を放つ――
そう、彼女たちは……夏の命そのものだった。












